バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
ぐらぐらする心に思わずそれを想像して目をぎゅっと瞑ってしまう

気付けば、肩の辺りにさらさらとした感触、花のような薫り、だけど亡くなったあの人に少し似ていて懐かしさを感じさせるイイ匂い

ぴったり私にくっついている暖かくて大きな身体

「あまり強く握ると傷付く、鋭いからな」

彼はそう言って牙が握られた私の拳を優しく親指を滑らせてほどく

「やさしいですね」

彼を目の前にすると強く惹かれれば惹かれるほど敬語になっていった

まるでその想いにブレーキをかけて距離を取ろうとしているみたいに

「眼鏡を返してください」

彼の動きが止まって拳に向けられていた視線が私の目に合わせられる

この美しい瞳にドキドキして未だになかなか目を合わせ続けられない

「明日はあの人の命日なんです、どうしても眼鏡が側にあってほしいんです」

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