バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
だから彼に似ていたんだ

彼の血が流れているからどこか懐かしい匂いがした

なんにも知らないはずの彼の行動も洋服の嗜好も似ているどころか同じことがたくさんあった

彼はあの人の思い出や感情を感じてたんだ、だからただの人間の私にこんなに構うんだ

やっぱり彼が私を好きな訳でも愛しく思ってる訳でもなかったんだ、あの人の想いを自分の思いと感じて信じこんでしまっていただけなんだ

何てことだろう、私たちは夫婦で彼を縛って彼も気づかないうちにその自由なはずの思考さえ奪ってしまっていた

身体から血の気が引いていく、指先が冷たくなるような感覚でうまく動かせなくなる

いくら彼があの人を殺めたといってもこんな風に本人も気付かないうちに思考の自由さえ奪うなんてあんまりだ

(あぁ、早く彼を解放してあげなくちゃ…)

知らずのうちに目に涙が溜まって一筋流れる

彼はそれをなめとって綺麗だって呟く、とても愛しそうに
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