バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
全身から俺を拒絶する張りつめた気配が皮膚をピリピリと刺激する

もし、無理に触れれば彼女はガラス細工のように割れてしまいそうだ

だから彼女から静かに離れ、その部屋から出ていく

そして、何度こうしたかもう分からないくらい、鏡を見なくても手探りで簡単にはめられる使い込まれた首輪を着けて変化する

そっと鼻で扉を開けて、床にへたりこむ彼女の側へ行く

こんな時でも彼女は美しい、そして今にも壊れそうだ

先程と同じようにその涙を舐める

先程とは違い彼女はそれを素直に受け入れる

そして、俺の首に腕を回して抱きつく

震えている、本当は抱き締め返してその震えを止めたいが今の姿ではそんなことはできない

いつしかこんな状態の彼女でも本来の姿で側にいることが許される日がくるのだろうか

しかし、今彼女をこんな風に苦しめているのは紛れもなく俺だ

こんな俺にとっては本当の姿のまま彼女の苦しみに寄り添うことは高望みなんだろう

そもそも、彼女を前にすると自分をコントロールできなりその血に簡単に酔って彼女を壊すような俺には許されない

それに彼女から無理にヤツを消すつもりもない、彼女にとっては大切なかけがえのない人だ

俺なんかよりも彼女が一番大切だ、与えられるものはすべて与えると決めた

だから、彼女のもうひとつの拠り所、

わざと寝床に置き去りにしていた眼鏡を彼女に返そうー
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