バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー

もう十年以上前、

出会ってからずっと、

あの人は私がどこへ行こうが何をしてもなんにも言わないけど

私が帰るところは必ず彼のところだった

私は旅行が趣味で、学生の頃は特にバイトをしては彼を置いて海外へ行っていた

だけど、まるで見えない鎖で繋がれているように

まだ結婚もしていない頃から、

どんなに遠いところへ長く行っていても一番に帰るところは家族の所ではなく彼のところだった

私は彼から離れることなんて出来なかった

この鎖はお互いを縛るものだから、あの人にとっても同じだったんだ

死というとんでもなく離れた場所にいてもあの人は私に繋がれているから、どうやっても戻ってこようとする

こんな歪んだ私たちの関係に彼は巻き込まれただけなんだ

ヴァンパイアの彼はあの人の行動を自分の感情の一部だって思ってるみたいだけど、本当はそれだけじゃないと思う

だって知ってる、あの人は私のことをすごく凄く愛してくれていて

そして、私にはよく分からなかったけど家のあちこちに何か細工をしてるくらい、

私のことだけにとても臆病なほど心配性なことを…

< 141 / 167 >

この作品をシェア

pagetop