バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
「大切にしてくれてることは分かってたよ、でも、私のことやりすぎってくらい…っ」

生きているときにあの人に触れたように、墓石のはしに手を置く

「すごく、いまでもっつ、想ってくれてたんだねっ、なかなか気付かなくてごめんなさい…」

酷くつめたい石に今更だと言われている気がして視界が歪んで溢れる直前だ

「ねぇ、私が帰って来たから許すっていっちゃったから?…」

言葉がつまる、

ざくざくと響く音、さすがにここじゃあ足音は消せない

いつもなら命日でもこんな雪の中お参りに来ない、でも今年はここに来なきゃいけない気がした

あの人の骨が埋まる場所に

「ほんとうまだいるの…?」

(彼の身体の中に…)

あの人の肉体が本当に骨になってしまってもうこの世にはいてはいけない事を、またちゃんと思い出すためにこの場所に来た

「私は大丈夫だよ」

ゆっくり振り返る

「もうやめにしよう」

私はお墓の中の彼と目の前の彼に向かって言った

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