バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
家に近づくごとに雪の気配は強まり、つい三日前も大雪で交通は麻痺し、町中には三日間では溶けきれないたくさんの雪が積もっていた

「去年は全然降らなかったのにな」

今日から明日にかけても大雪警報が発令されたのはその日の午後6時を過ぎたころだ
それと同時に明日の予約キャンセルの連絡が何通もメールで届く

「そりゃ、そうだよね、雪掻きなしでラッキー!
でも、もっと早く警報だしてくれてればな~」

結局明日は全ての仕事がキャンセルになりメールを返しながら、久しぶりに一人で夜過ごすことに気付いた
この一年、ひたすら仕事をして息子たちと苦しい気持ちと向き合い、時に止められない涙も三人でその夜を乗り越えてきた
でもそれも日を追うごとに減っていき、気付けば丸一年あっという間で、何より慌ただしい日常が心の痛みを鈍感にしてくれていった

「まずったな」

この雪では温泉に戻ることなどできないので、明日雪が止むまで大人しく家の中で過ごすしかない
大雪への警戒は明後日のよるまで必要なようだ

「こんなにひどいんじゃ、あの子達あした帰ってこれるのかな?」
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