バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
「それでね、ロキのコマがすごくつよくて」

「さっきやったらバーンてあいてのやつふっとばしちゃったの」

「そうなんだ、二人ともすごいね、
また明日起きたらしようね、おやすみ…」



子供達が寝静まってから一人キッチンに立つ

冷蔵庫から出した10本ほどの缶を開けてはシンクへ流す

とうに消費期限を切らしたアルコールたちは、勢いよく流れて甘い匂いを放っている

ほんとうはもっと早くに処分するつもりだったけど、一周忌のあの日が後ろめたくてなかなか捨てられずにいた

今年は子供もいるし、自分からはもう絶対にお酒は飲まない、でも何故かまたあの男が私の元にやって来そうな気がしていた

缶を片付け終わったあと、ダイニングテーブルに置いてあった眼鏡ケースを開ける

中は空っぽだ

一年前のあの日から無くしたままだ

この一年どんなに探しても見つからなかった

(まるで彼が怒って私の元を去ってしまったみたい…)

(ごめんなさい、ごめんなさい、)

(謝っても許されないかもしれないけど、何でもするから帰って来て)

朝が早かったので猛烈に眠気が私を襲う、そして一年前のあの日のように私はそこで眠ってしまったー


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