バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
彼がいなくなってから初めての一人の夜、

この一年それがなかったのは、たまたま彼らを預けずとも仕事がこなせてきたのもあるがなにより不安にさせないためもある

でも本当はそれだけではないのかもしれない…

両親と雪の状況で今後どう対応するかのメールのやり取りを終えスマホをダイニングテーブルに置く

雪があまりにもひどいようならもう一泊するとのことだ
同じテーブルの下にしまってあったメガネケースを手に取り開けると黒渕メガネを指でツンとつつく、

「おつかれ、今日は久しぶりにふたりきりだね、お風呂上がりにお酒のもうかな」

いつもよりゆっくり、のんびりお風呂に入って久しぶりに落ち着いて全身を洗えた
心も少し軽くスッキリした気がする

冷蔵庫から缶チューハイを取り出す、一年以上前に買ったものの賞味期限は大丈夫そうだ

プシュッ

「カンパーイ!」

テーブルの上に置いたメガネの角にやさしくコツンと缶をあててグクゴクと一気に四分の一ほど飲む

元々お酒は弱くて全く飲まないというよりは飲めない領域だ
彼にチョコレートボンボンでさえ心配されて特に人前で飲むのは禁止されていた

当然心臓はドキドキと鼓動を早めて呼吸がハァハァ言う、頭はぼーっとして、だけど眠るのとは違うフワフワした寝たいけど寝られない不快な感覚

(これは私のためのものじゃない、でも飲む人はもういないし、私以外誰もいないからいいじゃないー)
< 6 / 167 >

この作品をシェア

pagetop