バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
ふわふわからだが浮いている
逞しい腕と胸板が私を壊れ物みたいに優しく抱き上げている
(前にもあったな…)
(たしか一番最近でこんな風に運んでもらったのはみんなでインフルエンザになっちゃって最後に私が倒れたときだ)
(あぁ、ロキだ)
夢かうつつか、よく分からない、
(お酒で失敗しちゃってまた迷惑かけたな)
瞼が重くて開かないので、そのまま意識が遠のく
(行かないで…)
いつしか背中にあった温もりが無くなる
だけどしばらくするとまた優しい体温が戻ってきて私は安心してまたまどろみから深い眠りへと入る
(あぁ、ロキがいるから背中があったかい…)
首もとをさらさらと撫でるちょっとくすぐったい髪の毛の感触と胸元の重みに目を開ける
真っ白なきめ細かい肌、でも血管か浮き出てゴツゴツしてたくましい腕が私の顔元にある
後ろから感じる吐息は震えているようでまるで泣いているようにさえ感じる
(前にもこんな感じあったな、いつだっけ?)
ぼんやり考えながら何の気なしにそのすべすべな肌を撫でる
そして、そっと振り返るー
(あぁ、貴方がロキだったんだね)
(私、まだなんにもいってないけど、なんでそんなに泣きそうな顔をしているの?)
キラキラの瞳に泣かないでって思いながらその整いすぎた顔の頬に触れる
「ごめんなさい」
(ずっと気づかなくて)
「ずっと会いたかったの」
(ずっと探してたのに近くにいたんだ)
「名前は?」
(貴方の本当の名前は…?)
まどろんでいつかの夢を見ている、きっと起きちゃったら忘れちゃうやつだ、とても大切なことなのに、
私を現実に引き戻そうとする目線を感じる、そして優しい感触もー