バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
春の風が吹き桜が舞う頃、女と子供達と花見に行った

遠くで仲良く遊ぶ二人の声を聞きながら女と寝転がり春の暖かい光りを身体に感じて穏やかな気持ちでいた、俺はあんなに優しい太陽の光も柔らかい風もそれまで感じたことはなかった

俺の中にいるオレも生きている時はこのような時を過ごしていたに違いない

女と子供達から幸せや笑顔を奪った張本人は俺だ

そんな俺がただの人間の女を、いつしか彼女を愛してしまった

(ヴァンパイアの俺が…)

そして、今では彼女もその子供達もとても大切に思ってしまっている

(だけど、あの時感じたことも湧き上がる今この思いも俺だけのものであることは確かだ…)

俺の手元に残ったのはあの男の眼鏡だけだ

あれからは遠くから彼女や子供達を見つめることはあっても、ロキとしてさえ一度もあの家に行っていない

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