バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
なんて狡猾な罠だ

気づいた時にはもう逃げられない

「ねぇ、ロキなんでかえってこないの?」

こんな風に俺をおびき寄せて捕らえるなんて末恐ろしい、確かにあの結界を張ったやつの子供だと感心さえしてしまう

俺は姿を見せるつもりなんてなかったのにこの兄弟にまんまと捕まってしまい弟に首に抱きつかれてしまっている、これじゃ無理に振りほどけば怪我をさせてしまうので動けない

「ママがさみしがりやなこと知ってるでしょ?もうボクたちは一緒に寝ないっていってるのにベッドに入ってくるんだ!」

(寂しがりやなだけじゃなくて甘えん坊だもんな)

「ロキだってほんとうはママと寝たいんでしょ?いつもボクたちが寝ちゃったらママのとこにいってるのしってるよ」

(バレてたのか)

「今日は一緒に寝ようね」

(帰りたくても帰れないんだ…)

「ママが心配してるよ」

(真実を知ったらそんなこともなくなる)

「なにかしちゃったの?怒られるとおもってるの?」

(怒られるとごろじゃない、俺はお前たちの父親を殺した)

「!」

さっきから話しかけてくるのは弟だ、兄は側でじっと俺を見つめている、その瞳がぐらっとゆらいで彼女そっくりで俺を責めているようで目を合わせられない

「ロキは自分からわるいことなんてしないでしょ?」

(俺はヴァンパイアだからハンターに、お前の父親に会えば戦うことは避けられない、そしてあの時は生きるためにお前の家族の血を吸うしかなかった)

「…ロキも家族だよ」

「しょうがないじゃん、わるいことしちゃったら謝ればいいんだよ、ママはすぐ怒るけど、ちゃんとはなせばゆるしてくれるよ」

(そうだろうか?どんなに彼女が優しくても流石に無理だろう…)

(それに赦されるつもりもないんだ…)

弟は頭の回転が早く、自分の感情に従ってストレートにそれを表す
兄も賢いが性格は反対でよく周りをみていて様々な事までよく気がつくし慎重だ

「…母さんがとても悲しんでる、父さんがいなくなったときみたいな顔をたまにするようになった」

(!)

静かに兄が俺に語りかける

「父さんも大好きだったけど、今は母さんを悲しませたくない」

(すまない…)

「ロキを連れてきたのは僕だし全部話して一緒に謝るから帰ろう…」

(約束する、ちゃんと彼女に話す)

赦されるつもりなんてなかったが、弟だけでなく兄も俺を赦そうとしているようで、すごく勝手だが子供達だけでも俺のことを受け入れてくれるようで心が少し軽くなる

「母さんは意外と脆いんだ、一緒に母さんを守って」

(それが償いになるなら、ずっと彼女の側にいよう)

「ロキはもう家族なんだ」

やっぱり彼女の子供だ、二人はどこまでも優しい

(ありがとう)

俺なんかをつなぎ止めようとしてくれてー



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