バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー

そしてその風にのって甘く懐かしい香りとともに雪に混じって一人の女が姿を現したー

相手を見つめながら、こんな状態で悲鳴をあげられて人が集まったら面倒だ、
何よりこの傷を回復させるのにちょうどいいかもしれないと思いを巡らせていて違和感を感じた

その女はこちらに向かって来ているが、俺を視界に捉えていない…

普通俺たちヴァンパイアは人間の天敵であるため人がその姿を確認すればこちらが罠を張ってでもいない限り本能が働き警戒する
特にこんな全身キズだらけで血まみれだ

しかし、その女は歩みをとめずまっすぐこちらに、でもその瞳は何処を見ているのか分からない

何にせよこの状態で餌の方から近づいてくれるなんて好都合だ

女が三メートルほどの距離に来たとき、次はちょうど俺から女のほうへ向かってまた強い風が吹いた

その時彼女の髪は大きくなびいたが顔にかかった髪の間で揺れた大きな瞳はより大きく一瞬だけ見開かれた、彼女が俺を初めて認識した瞬間だった

「あなた、とてもイイ匂いがする、」

そういって俺の前に立ち止まる

(それは俺のセリフだ)

近づけば近づくほど女の匂いは俺の身体を熱くさせ、血が逆流するどころか身体を流れる血が歓喜で彼女に直接襲いかかりそうな錯覚を覚える

「ひどいキズ…」