バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
私が、窓に向かってポツリと彼の名を呼ぶと、いつの間にか音もなく私の後ろに立っている

いつも彼は私の頭を固定しながら、キスをする
私はもう逃げたりしない、むしろ自分から彼を呼んでいるのに

ごくんと飲み干せばゆっくりと唇が離れる

そしてゆっくり私の洋服をはだけさせる

鋭く熱い視線が私の身体に絡み付いて、身体が熱くなっていく

彼はすぐには血を吸わない、私を弄びながら、私が気を失いそうになる直前に私の肌に牙を立てる

その頃には全ての刺激が快楽なってしまっているから私はそれさえも感じるだけだ

彼が私の血と身体に満足すると、いつも最後に優しいキスをする

それを感じると私はたちまち深い眠りについてしまう

私は自分の醜さやズルさから目を逸らすために自分勝手に彼を利用しているだけなのに、こんな風にされてしまって心がざわざわする

彼の与える刺激を感じているときはそれでいっぱいになって、最愛の人がいなくなったことも、その人を奪った男のことも寂しさも全て考えることも感じることもせずに済む

でも、本当に私はズルいからそれ以外に新たに芽生えている気持ちからも目を背むけたい

本当の気持ちに向き合うのが怖くて、だけどその気持ちを吐き出す場所がほしくて
とても綺麗で優しい彼を手離したくなくて、彼に付け込んで彼の罪悪感を利用して縛る理由を無理に作った

私は狡くて汚い、こんな自分を傷付けたくてしょうがないからきっと罪悪感だけで私への心なんてない彼に抱かれる



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