バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
「はい、お土産!」

目の前に出されたのは小さなスカイツリーのラインストーンがついたシンプルなTバックの下着だ

「ありがとうございます、このチョイスさすがですね」

ちょっと苦笑しつつも素直に受けとる

お店の中は人でいっぱいだ、席同士が近くてさっきから後ろの席の人の肘や椅子がよく当たるし、騒がしいのでよく耳をすまさないと相手の声が聞きにくい、でも活気があっていい

「三十過ぎたら身体の色んな所がたれちゃうよね、Tバックはお尻の垂れにいいみたいだよ、私も最近ハマってるの」

(まじかぁ、さすが先輩…)

「私はもう見せる人もいなければ予定もないですけどね」

「そう?なんか前会った時より肌も白くなった気がするし、すごく肌も髪もツヤがあるよ、恋人できたのかと思った」

確かに最近はぐっすり眠れるし、肌も髪の調子もいい

「すごい洞察力ですね」

(だけど、相変わらずの恋愛脳だなぁ~)

先輩は彼がなくなった後も変な気遣いなく話せる数少ない人だ

4つ上のシングルマザーで二人の子供をお医者さんにするといっている教育熱心な人だ
そして、めちゃくちゃ仕事ができて私に仕事の基礎を全部叩き込んでくれた人でもある

感謝も尊敬もしている、たまに近況を報告し合うためにこうやって食事をしている
どちらかというと恋愛には淡白な私とは真逆で、だからこそこうやって付き合いが続いているのかもしれない

「恋人じゃないなら、好きな人できた!?」

「そんなのないですよ~、でも飼ってた犬が戻ってきてくれました!」

先輩はめちゃくちゃ仕事ができるし、人の何倍もパワーがある感じの人だけど超恋愛脳だ
そして自分に素直で真っ直ぐストレート、それが原因で離婚したりもしている
普通の人からしたらちょっと考えられない行動もするし相容れないところもあるけど、私は仕事にも子育てにもそして恋愛にまで常に全力投球な先輩が大好きだ

「あぁ、めっちゃ凹んでたもんね」

鋭い先輩だから、なんとか私の恋愛話から離れたい

「恋より犬か~、恋愛すればいいのに、楽しいよぉ」

「先輩、新しい彼氏できたんですね!」

目をキラキラして時々くしゃっと笑いながら新しい彼氏の話をする先輩はとてもキュートだ
あんなに仕事ができてバリバリ働いているのにこのギャップが男の人たちはたまらないのかもしれない、いや、私もそんな彼女に魅了されている一人だろう

「何でそんなに淡白なの?旦那さんは恋愛体質っぽかったのに」

「えぇ?そんなことないですよ?好きとか片手に入るぐらいしか言われたことないですし…」

「いやいや、一緒に食事したときなんかずっと見つめられてたじゃん、
物腰は柔らかかったけど、オレのものってオーラバリバリだったし、
それどころか奥さんなしじゃ生きてけないって感じで結婚して子供が二人もいるカップルとは思えなかったよ」

「そんな風でした?
全く気付きませんでした、彼はシャイだから私が見つめても目が合うこともほとんどなかったです」

彼の評価にびっくりだ、大事にしてくれているとは思ってはいたけど、恋愛体質とか感じたことなかったし、口数も少なくどちらかというと私みたいに物事にあまり執着しないタイプだと私は思ってる

「また他の人にあぁいう風に愛されたくない?」

「んー、彼にならいいですけど、愛さたいっていうか男の人に愛される必要性を感じないですね」

もともと恋愛に淡白なのもあったけどもう結婚して子供もいるので今では恋愛の必要性を全く感じない

「そもそも恋愛とかする元気が私にはないです」

「まだまだ若くて女盛りなのに枯れてるなー、でも恋には落ちるものだよ☆私のようにね!」

そういってまた新しい彼氏の話を楽しそうにする彼女を見ていると、恋するとこんなに可愛くなるなら恋愛もちょっといいかなと思ってしまうぐらい素敵だ

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