隣の席の不思議系彼女
あれ?

用を足して、軽く、名前のわからない美味しそうな物をつまんで、そろそろ戻ろうか、と以前の場所に戻ってきたは良いものの……壺山がいない。

キョロキョロと辺りを見渡してみるも、壺山らしい姿は見えない。

「あ、きみ、麗歌ちゃんの……。
確か、安城君?」

「あ……」

目の前に、さっきまで壺山と楽しそうに喋っていた爽やか青年が現れた。

「あの、つ……麗歌は?」

いつも通り壺山と言いかけて、慌てて名前で言い直した。下の名前で彼女を呼んだのは初めてだ。
目の前の彼が「麗歌ちゃん」と呼ぶのが何だか負けたようで悔しくなったから。

今日の俺はどうかしている。

この慣れない空間に、普段しない服装に、目の前の壺山と親しげな青年に、戸惑っているのかも知れない。

……壺山が、俺以外とあんなに楽しそうに長いこと話しているとこ、初めてみたし……。
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