未練と祝福 〜14年目の永遠の誓い 番外編(3)〜
「でさ」
オレが半ばフリーズしているのを知ってか知らずか、水森はピンと立てた人差し指でオレの眉間を突きながら話を続ける。
「広瀬先輩の誕生日に入籍、」
「にゅうせき!?」
もったいぶった水森の言葉に思わず大声を上げるが、言葉の意味が分からない。
にゅうせき……って何だっけ?
オレの微妙な反応に気付いた水森は、
「籍を入れるんだよ。……つまり、実質的な結婚」
籍を入れる?
実質的な、……結婚!?
「なんで!?」
ってか、
「誕生日って!?」
そもそも、
「それっていつ!?」
「8月の半ばだって。18歳になるからって、」
いや、確かに18歳になったら結婚できるよ?
できるけど、普通、18歳になった途端に結婚する!?
まだ高校生だよな!?
「……てかさ、なんで、お前がそんなこと知ってるんだよ」
「オレの姉ちゃん、1歳上。牧村先輩たちと同じクラスなの」
「……そうなの?」
「……お前、ホント、大概、牧村先輩以外に興味ないな」
陽菜ちゃんに振られてから既に一年以上経っている。
諦めたつもりだったけど、そう簡単に気持ちが切り替わるはずもなく、オレは相変わらず、密かに物陰から陽菜ちゃんを見守る生活を続けていた。
そんなオレを、水森はよく知っている。
だけど、
「いや、さすがにそんな事はないだろ」
彼女が欲しいとかは思わない。陽菜ちゃん以外の女の子に興味はない。だけど、さすがに陽菜ちゃんだけが生活のすべてじゃない。
ただ、水森に一つ上の姉がいたことを知ったのが今なのは事実。やっぱり、もう少し周囲に目を向けた方が良いのかもしれない。
「ま、いっけどさ。姉ちゃんのことなんて話さないもんな」