未練と祝福 〜14年目の永遠の誓い 番外編(3)〜
あれから一年とちょっと。

まだ、陽菜ちゃんへの想いは薄まらない。

ウェディングドレス姿を見たら、結婚式を見たら、幸せいっぱいの2人を見たら、過去にできるかと思った。諦められると思った。あわよくば、祝福できるかもと思った。

……無理だよ。

だって、まだこんなに好きだ。


オレにできるのは、見守るだけ。

陽菜ちゃんの幸せを祈るだけ。


分かってるから何もしない。

何もできない。
そもそも、祝福以外の何かをする権利なんてカケラもない。

だから、打ちのめされる事だけが、今のオレにできること。

後、どれだけ現実を見せつけられたら、気持ちに整理が付くのだろうか?



どれくらいの時間が経ったのだろう?

歓声と拍手が耳に飛び込んで来た。

そういえば、ぼんやりしている間に、参列者が教会に入るのを目にした気もする。


にぎやかな音に我に返り、教会の見える位置にそっと移動した。

ちょうど教会の大きな扉から、陽菜ちゃんと広瀬先輩が出て来たところだった。

陽菜ちゃんは純白のウェディングドレスを着て、手には可愛らしいブーケを持っていた。
広瀬先輩はグレーのタキシードを着ていた。

陽菜ちゃんの眼からは涙がポロポロとこぼれ落ちる。

それが、悲しくて流れる涙でないのは間違いない。
広瀬先輩は隣の陽菜ちゃんを労わるように優しい眼で見つめている。

腕を組んで歩く2人の姿をカメラマンが何か言いながら、パシャパシャと写真に収めていた。


太陽は間もなく中天に登るという午前の終わり。


木漏れ日が溢れる森の中の教会で、

幸せそうに赤い絨毯の上を歩く2人を、

大勢の参列客に祝われる2人を、

オレはただ見守っていた。
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