未練と祝福 〜14年目の永遠の誓い 番外編(3)〜
目の前を、幸せそうな2人と、それを取り囲む人たちが、映画のワンシーンのように、静かに流れていく。

投げられたブーケに群がる女の子たち。

参列者全員での記念撮影。

やがて、陽菜ちゃんたちは、大きな車に乗り込み、少し後には参列者たちも観光バスに乗ってどこへやら移動し、いなくなった。


オレは、それでも、まだぼんやりと、さっきまで陽菜ちゃんたちがいた教会を眺めていた。



「おい」

「……う、わっ!」



思わぬところで声をかけられ、思わず飛びのくと、



「お前、何しに来た?」



オレの前には、恐怖の大魔王……陽菜ちゃんのお兄さんが立っていた。


まずい!


最初に思ったのは、そんな言葉。

何もまずいことはしていない。だけど、陽菜ちゃんを溺愛する、この人からしたら、間違いなくオレは排除すべき人間だろう。



「え…っと、」

「ん?」



お兄さんは口の端を上げ、冷たい笑顔を見せる。

ヘビに睨まれたカエル。
そんな言葉が不意に思い浮かぶ。もちろん、お兄さんがヘビでオレがカエルだ。



「あ…の……お久しぶり、です」

「ああ、久しぶりだね。……で?」



冷たい。

夏だと言うのに、オレたちの周りにだけブリザードが吹き荒れる。

それくらい、お兄さんの視線と纏う空気は冷たかった。



「オレ、あの…別に邪魔しに来たわけじゃなくて、」


口をついて出るのは、つたない言い訳。

いや、本当に邪魔しに来たわけではないのだけど……。



「へえ。……で?」

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