《短編》ガラクタ。
結局少しの押し問答を繰り返し、きっと面倒くさかったのだろうアラタは、“じゃ、そういうことで”と強引に話を終わらせ、そして勝手に電話を切ってしまう。
耳に鳴り響く機械音はひどく不愉快極まりなくて、あたし以上に我が儘で自己中だとしか思えなかったわけだけど。
それでも暇だし、ムカつくけど鳳凰をもう一度拝みたいという欲求が勝りあたしは、ため息を混じらせてオレンジに染まる街にきびすを返した。
自分自身、一度訪れただけのマンションの場所を覚えていることには驚いたけど、でも、分かりやすい場所だしと、何故かまるで言い訳めいた言葉を頭の中で並べてしまう。
3階の同じような扉が並ぶ中で、アラタの部屋だけには表札がなく、ある意味これが、目印なのだろうけれど。
ため息だったのか気合いだったのかの吐息を一度深く吐き出しあたしは、玄関のチャイムへと人差し指を伸ばした。
ピンポーンと軽やかな電子音が響き、少しの後、ガチャリとそれが開けられて、とりあえず驚いたことは言うまでもないだろう。
「…どちら様?」
いや、こっちが聞きたい。
部屋は確かに間違っていないはずだけど、でも、出てきたのはアラタじゃない男で、おまけに中からはガヤガヤと他にも数人居るのだろう声が聞こえる。
どうしたものかと目線を泳がせていると、“マイ?”と、そう声が聞こえたのはそれからすぐのことだった。
「あぁ、アラタさんの彼女サンっすか?」
「いや、彼女じゃないよ。
けど、俺の女。」
そう、男の後ろから現れたのはあたしを呼び付けた張本人で、咥え煙草のままにフッと不敵に唇の端を上げるいつもの顔を、思わず小さく睨んでしまうのだけれど。
「アンタの女になったつもりはないけど?」
「そうだっけ?
まぁ、どっちでも良いし、お前も入れよ。」
素っ気の欠片もないよに投げられた台詞に、だけどもあたしは足を進めることを躊躇してしまう。
耳に鳴り響く機械音はひどく不愉快極まりなくて、あたし以上に我が儘で自己中だとしか思えなかったわけだけど。
それでも暇だし、ムカつくけど鳳凰をもう一度拝みたいという欲求が勝りあたしは、ため息を混じらせてオレンジに染まる街にきびすを返した。
自分自身、一度訪れただけのマンションの場所を覚えていることには驚いたけど、でも、分かりやすい場所だしと、何故かまるで言い訳めいた言葉を頭の中で並べてしまう。
3階の同じような扉が並ぶ中で、アラタの部屋だけには表札がなく、ある意味これが、目印なのだろうけれど。
ため息だったのか気合いだったのかの吐息を一度深く吐き出しあたしは、玄関のチャイムへと人差し指を伸ばした。
ピンポーンと軽やかな電子音が響き、少しの後、ガチャリとそれが開けられて、とりあえず驚いたことは言うまでもないだろう。
「…どちら様?」
いや、こっちが聞きたい。
部屋は確かに間違っていないはずだけど、でも、出てきたのはアラタじゃない男で、おまけに中からはガヤガヤと他にも数人居るのだろう声が聞こえる。
どうしたものかと目線を泳がせていると、“マイ?”と、そう声が聞こえたのはそれからすぐのことだった。
「あぁ、アラタさんの彼女サンっすか?」
「いや、彼女じゃないよ。
けど、俺の女。」
そう、男の後ろから現れたのはあたしを呼び付けた張本人で、咥え煙草のままにフッと不敵に唇の端を上げるいつもの顔を、思わず小さく睨んでしまうのだけれど。
「アンタの女になったつもりはないけど?」
「そうだっけ?
まぁ、どっちでも良いし、お前も入れよ。」
素っ気の欠片もないよに投げられた台詞に、だけどもあたしは足を進めることを躊躇してしまう。