《短編》ガラクタ。
「てか、そんなの聞くためにわざわざ呼ばれたんなら、用も済んだだろうし、あたし帰るから。」


「セックス、していかないんだ?」


「アンタじゃなくて、背中のペットに会いたかったの。」


「へぇ、そりゃ愛されてんな。」


「背中の子のことはね。」


刹那、肩をすくめるように背もたれに体を預けたあたしに彼は、覆い被さるようにして唇を触れさせた。


いつもアラタのキスは突然で、目を閉じるのを忘れてしまうんだけど。


だけど今度のは少しばかり様子が変で、不審に思って彼の首筋に手を添えてみれば、熱を帯びていることに驚いた。


どうやら風邪って言ってたのは、本当のようだけど。



「お前、お粥とか作れる派?」


「…まぁ、適度に。」


「じゃあ決定。」


「……は?」


「お前、俺の看病しろよ。」


「やだよ、ダルい。」


「だったら残念だな。
愛しの鳳凰との再会は、また今度ってことで。」


まるで噛み付かれそうな距離で交わす会話は、そんな一言によって途切れてしまう。


本当に風邪で熱があるのなら、もう少し病人らしくしてくれればまだ、心配のひとつくらいはしてやるってのに。



「…材料、あるんでしょ?」


「良い子だな。
俺、そんな女嫌いじゃないぜ?」


「アンタの好みなんか聞いてないから。」


お粥を作れば鳳凰と会えるのならば、それくらい易いものだ。


普段は爪の心配をして料理なんかしないけど、でも、あたしだって鬼のようなばあちゃんに少しは鍛えられた過去があるんだからと、

そんなことを思いながら覆い被さるアラタに“そこで寝ときなよ”とだけ告げ、その体を退かした。



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