《短編》ガラクタ。
「意外だな。
ギャルのくせに料理出来るんだ?」


“寝ときなよ”と言ったにも拘らず、アラタはキッチンに立ったあたしを物珍しいとでも言った様子で、そんな風にして後ろから声を掛けてきた。


背中を向けて適当に冷蔵庫や何かを見てみれば、一応色々と詰まっていることには、やっぱり驚いたのだけれど。


てゆーかギャルじゃないし心外なんだけど、でも、もう突っ込むのさえも面倒で。



「出来ないと思うなら、何で呼んだの?」


「いや、アイツら誰も料理なんか出来ないしさ。
お前も出来なかったらどうしようと思ってたんだけど、他に居なかったから。」


「レトルトなら売ってんじゃん。」


「へぇ、そうなんだ。」


「そんなことも知らなかったの?」


少し得意げに鼻で笑って言ってみれば、本当に風邪なのかと見まごう彼は、あたしを斜に捕えて瞳を投げる。


ぶっちゃけ邪魔だし、どっか行って欲しいのが本音なんだけど。



「つか、普通そんな爪で料理するとか思えないっしょ。」


「ばあちゃん、2年前に死んだんだけど。
超厳しくてさ、これ位出来なきゃ女じゃないとか言って、鬼だよ。」


「へぇ。」


「てか、お粥って何気に高度な料理なんだよ?」


「マジ?」


「マジだよ。
放っといたら噴き零れたりするからね。」


多分あたし自身、会話が面倒な部類に入る人間だと思うんだけど、でも、アラタと話すのは嫌いじゃなかった。


たまにぶっ飛んだこと言うのが面白くて、ついでに久々の料理を作るなんて行為にワクワク感も覚えたのだろうあたしは、いつもより饒舌だった。


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