《短編》ガラクタ。

考えたこともなくて、小首を傾げて想像してみたけど、でも、答えなんて見つかるはずもなかった。


あたしが泣くなんて思わないけど、それでも涙を流したとするならば、きっともうこの鳳凰を拝めなくなるからだろう。


だってあたしを満たせないアラタなんかに、用はないから。



「多分、同じ毎日に戻るだけなんじゃない？」


「へぇ。」


そう、軽く言ったアラタは白灰色を漂わせながら、手元の缶ビールを流し込んだ。


多分あたしには必要な感情が欠落してるんだろうけど、別にそれがなくても今まで普通に生きてきたのだから、問題はない。


アラタが居なくなったところで、あたしにはきっと、大した変化なんてないのだろう。


外は久々に雨が降っていて、雨音は静かに部屋に響きながら、静寂を包んでいた。


刹那、珍しくあたしの携帯の着信音がこだました。


普段はマナーモードにしているのだが、消し忘れていたのだろう、不愉快な電子音に眉を寄せ、仕方なくそれを持ち上げ、ディスプレイを確認した。



「あ、シゲちゃんだ。」


そういえば、とあのまま無視し続けていたことを思い出し、連絡すると言ったきり放置していたな、と思った。


普通ここまでされたら諦めるはずなのにと、しつこく鳴り響く着信音にため息を混じらせながらあたしは、それの通話ボタンを押したのだ。



『……マイ…』


「何？」


耳に当てた早々に、気が滅入るような重苦しい空気の中であたしの名前が呼ばれ、正直うんざりしてしまう。


アラタの咥えていた煙草を取り上げ、それを吸い込み吐き出してみれば、彼は鬱陶しそうに眉を寄せるのだけれど、そんなの無視だ。



『…今まで、何やってた？』