《短編》ガラクタ。
「別に。」


『とりあえず、会って話したいんだ。』


「やだよ、ダルい。」


『お願い、待ってるから。』


シゲちゃんにしては珍しく、あたしの意見も聞かずに勝手に通話を遮断しやがった。


無意識のうちに舌打ちを混じらせてしまえば、アラタの煙草は無駄に苦い。


仕方なくそれを灰皿へと押し当てると、こちらを捕らえていた彼の視線とぶつかった。



「あたし、どっちみちバイトあるから帰るわ。」


「その電話?」


「違う、電話は彼氏らしきもの。」


「…別れたんじゃなかったっけ?」


「あたしも別れたんだと思ってたけど、別れ話してないから別れてないのかも。」


「何だそれ。」


「そういえばアイツの家の鍵も持ったままだし、気持ち悪いからバイト前に返しに行こうと思って。」


別に捨てても良いのだけれど、別れ話をしなきゃ別れられないのだとするならば、ついでにその話もしなきゃならないことになる。


本当に、面倒極まりない。



「じゃあ、バイト終わったら連絡して来いよ。」


「…どしたの?」


「ヤりたくなるだろ、お前が。」


確かにな、と思った。


だってお酒が入ったら絶対に、あたしはアラタに抱かれないと気が済まないのだから。



「アンタもでしょ?」


そう返したあたしに彼は、当然だとでも言わんばかりに唇の端を上げた。


本当にどうしようもなくて、珍しく長く絡めるようにキスをしながら、彼の口内に残るビールの味を堪能する。



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