《短編》ガラクタ。
玄関でアラタは、あたしの好きなナウシカのDVDを用意して待ってると言ってくれ、まるでいつもと違うことに思わず驚いてしまったんだけど。
口元を緩めると軽くキスを交わし、あたしは彼の部屋を出た。
バイトまではあと2時間ほどはあるしと、そんなことを考えながらタクシーを拾い、アラタの家から車で数分の距離にある、シゲちゃんの家に向かった。
相変わらずの雨は降り止むことを知らないようで、久しぶりに訪れた彼の部屋の前で、服に付いた雨粒を払い、チャイムを押した。
少し待てばガチャリと扉が開いてみれば、顔を覗かせた彼は何故か、あたしを呼び付けておいて遠慮がちな顔で曖昧に笑う。
「中、入って。」
「良い、鍵返しに来ただけだし。」
そう言って銀色に光るそれを差し出したのだが、あたしの手元へと落とされた視線は、幾分悲しそうにも見受けられる。
結局そのまま鍵は受け取られることはなく、顔をあげた彼はまた、“入ってよ”とそんな台詞。
多分押し問答にしかならないし、このまま玄関で話してても異常なまでに寒くて、ため息をひとつ落としあたしは、言われた通りに部屋の中へと足を進めた。
「別れたいってわかんない?」
「…本気?」
「本気だよ。
実際あたし、連絡くるまでシゲちゃんの存在すら忘れてたし。」
そう言った瞬間、彼はあたしを抱き締めた。
思わず身構えてしまったのだけれど、想像とは別に、シゲちゃんはあたしを抱き締めたそのままの格好で、僅かに肩を震わせ始めたのだ。
まさか、泣かれるとは思わなかった。
「…放してよ。」
何となく、これじゃあたしが悪者だ。
おまけにシゲちゃんは嗚咽まで混じらせ、どうしたものかと思ってしまう。
「俺、マイが居なくなったら死ぬ。」
口元を緩めると軽くキスを交わし、あたしは彼の部屋を出た。
バイトまではあと2時間ほどはあるしと、そんなことを考えながらタクシーを拾い、アラタの家から車で数分の距離にある、シゲちゃんの家に向かった。
相変わらずの雨は降り止むことを知らないようで、久しぶりに訪れた彼の部屋の前で、服に付いた雨粒を払い、チャイムを押した。
少し待てばガチャリと扉が開いてみれば、顔を覗かせた彼は何故か、あたしを呼び付けておいて遠慮がちな顔で曖昧に笑う。
「中、入って。」
「良い、鍵返しに来ただけだし。」
そう言って銀色に光るそれを差し出したのだが、あたしの手元へと落とされた視線は、幾分悲しそうにも見受けられる。
結局そのまま鍵は受け取られることはなく、顔をあげた彼はまた、“入ってよ”とそんな台詞。
多分押し問答にしかならないし、このまま玄関で話してても異常なまでに寒くて、ため息をひとつ落としあたしは、言われた通りに部屋の中へと足を進めた。
「別れたいってわかんない?」
「…本気?」
「本気だよ。
実際あたし、連絡くるまでシゲちゃんの存在すら忘れてたし。」
そう言った瞬間、彼はあたしを抱き締めた。
思わず身構えてしまったのだけれど、想像とは別に、シゲちゃんはあたしを抱き締めたそのままの格好で、僅かに肩を震わせ始めたのだ。
まさか、泣かれるとは思わなかった。
「…放してよ。」
何となく、これじゃあたしが悪者だ。
おまけにシゲちゃんは嗚咽まで混じらせ、どうしたものかと思ってしまう。
「俺、マイが居なくなったら死ぬ。」