《短編》ガラクタ。
叔父さんの居酒屋のバイトを休んだのが初めてだったことには、自分自身驚いたけど。


昨日あのまま雨の中をとぼとぼと帰り、そのままシャワーを浴びてみれば時間には間に合わなくなっていたし、おまけに少し風邪まで引いた。


本当に、最悪だ。


ナウシカを観る気分にもならなかったし、当然アラタの家に行く気分になんてなれるはずもなかった。


お酒もセックスも欲する気持ちがなくて、あたしでもこんな風になるのかとさえ思わされる。


毎日の不摂生と最近の睡眠不足も祟り、ベッドから動けないまま、ただ、外を濡らす雨音だけに耳を傾け続けた。


シゲちゃんからの連絡はなかったから、あたし達は別れたのだろうとは思うけど、でも、アラタからの連絡もないまま。


まぁ、アイツからの連絡なんてある方が珍しいのだけれど、それでも心配しろよ、なんて自分勝手なことを思ってみたり。


我が儘極まりなくて、そんな自分が珍しく嫌いになった。


多分、メールを送ればそれで良かったんだろうけど、それ以前にあたしは彼のアドレスすら知らないままで、今度会ったらそれくらい聞いておこうかな、なんて考えながらまた、眠りに落ちた。







電子音が耳元でけたたましく鳴り響き、意識を手繰り寄せるように目を覚ましてみれば、時計の針は夕刻を指し示していた。


だけども部屋を染める色は相変わらず薄暗いままで、そんなことも重なりあたしは、憂鬱さを拭えない。



「…はい?」


仕方なくディスプレイも見ずに持ち上げた携帯の通話ボタンをやる気なく押してみれば、電話口の向こうからはサイレンが鳴り響いていた。


その瞬間、昨日のシゲちゃんの言葉を思い出し、背筋にゾッとしたものを感じずにはいられなかった。



『マイさん!!』


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