はじめては全部きみでした。
ーーーーー結弦君
身体が硬直して動かない。
近くになっちゃんがいるのも分かった。
お願い気づかないで。
お願い。
「ヒナちゃん?」
先輩の声にハッとして顔を上げた。
心配そうに顔を覗き込んでいる。
「あの…」
声が震える。
どうしよう。
今すぐどこかに隠れたい…
すると突然視界が真っ暗になった。
先輩の腕が私の後ろで交差されている。
「千代早く行こう」
「待ってよ結弦」
キャリーケースを引く音が聞こえて遠くなっていく。
「………行ったよ」