はじめては全部きみでした。



勢いよく扉を開けると、
机に座り窓から後夜祭の火起こしを見つめている先輩がいた。




「遅れてごめんなさい…」

「大丈夫だよ」



先輩の隣に座り同じように眺める。

たくさんの人の笑い声が聞こえる。




「今日は……笑顔がいっぱいの一日だったね」

「そうですね…」




先輩は少し下を向き何度か息を吐いては吸ってを繰り返した。



そして、



「ずっと……誤魔化してきてごめんね」




私は返事の代わりに頷いた。



今から聞く話は、先輩にとって辛い話かもしれない。




だけど、決めたんだ。


守ってばかりじゃなくて守りたい。




先輩には、過去を捨てて前を向いてほしい。




心から笑ってほしい。




「……"ひなた"は俺の幼なじみで、俺の彼女だった」




先輩が寂しそうな顔で話し始めた。



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