はじめては全部きみでした。


月の光で結弦君の顔が照らされた。



「結弦君…髪濡れてるよ」

「お風呂上がりだったから。ていうか泉も」



お互いの頭を見て目を合わせる。



「「あはははははっ」」



すごい。

不思議。


心臓は相変わらずうるさいのに、

なんでこんなに自然と笑顔になるんだろう。


まだ二度目なのに
結弦君にはそういう力があるのかもしれないね。



「わあ、本当に空が綺麗」

「だろ。泉いつくるのかなって思った」



それって。



「結弦君、昨日もいたの?」

「んーまあ。一昨日も」

「そう、なんだ…」



どうしてこんなに嬉しいの?

この気持ちはいったい…


結弦君に会って余計わからなくなる。



「雨が降った日の次の日はもっと綺麗に見えるんだ」

「それも見てみたいな…」

「その手に持ってるの、なに?」

「あ、これねお母さんにおつかい頼まれてて」

「じゃあ帰んないとやばい?」

「ううん、まだ大丈夫」



もう少し、結弦君とお話ししていたい。



「悩み事とかある時にここに来るのスッキリするんだ」

「どんな悩み事?…あ、ごめんなさい。図々しいよね」

「だから謝るなって。全然いいよ。彼女のこと」



結弦君、彼女いるんだ…。

あれ、なんだろう。

少し苦しい…これ、なんだろう…



「彼女のこととかで悩めるのって少し羨ましい…」

「なんで?」

「私…少し前に初めて彼氏が出来たの。でも、分からなくて」

「わからない?」

「人を好きになったことがなくて、好きってなんだろうって思ってたんだ。でも、そんな時に告白されてね、親友に落ち着く人は恋だって言われて付き合うことにしたんだけど…付き合ってからの空気が落ち着かなくなっちゃって…」

「…それ、恋なのか?」

「え?」

「いやまあ…人それぞれ違うんだろうけど」



結弦君の横顔が少し寂しそうに見えた。



「結弦君は…どんな悩み事なの?」

「んー………俺もわからないのかも」

「えっと…」

「彼女のことが何もわからないんだ。俺は彼女のことを女として見てるけど、相手はそうじゃなくて…ごめん、なんて言ったらいいのかわからない」

「あ、ううん。私そういうの全然わからないのに…聞いてごめんなさい」

「謝るなって言っただろ。もう禁止な。夜遅いしもう帰ろう」



結弦君の彼女ってどんな人なんだろう

結弦君 結弦君

私…結弦君のことが知りたいよ…



ねえ、この気持ちはなに?


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