はじめては全部きみでした。



昼休み、お弁当を持って啓介の待つ屋上へ向かった。


キィーーーーー

重たい屋上の扉を押すと、隙間から漏れる太陽の光が眩しい。



啓介は膝を立てて寝ている。



「啓介、起きて」

「ん…ヒナ…?」

「うん。啓介のクラス早く終わったの?」

「そー、結構待った」

「ありがとうね」



この間の啓介とは別人のように話しやすい。
怖さももうない。

幼馴染の時のようで、やっぱり嬉しい。



「なにニヤニヤしてんだよ」

「いつも通りの啓介で良かったって思って」

「はー?」

「この前の啓介、なんか怖かったよ」

「あー…ごめん」



私と啓介はこれでいいんだ。

結弦君のいう恋愛とは違うのかもしれない。


でもやっぱり、啓介といると落ち着く。
素の私でいられるんだと思う。


それに、啓介のことは好き。
よくわからないけど、好きって気持ちなんだと思う。


恋愛は人それぞれ。
私の恋の形は…きっとこれなんだ。

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