はじめては全部きみでした。



お昼休みが終わる頃、雨が降り始めた。

放課後にはかなり本降りになっていて、啓介とも寄り道をせずまっすぐ帰った。


「ヒナ〜、お父さん傘持ってないみたいだから駅まで届けてくれない?」



お母さんが言った。



「うん、わかった」



お父さんの黒い傘を持つと大雨の中少し小走りで向かった。

駅には沢山の人がいて、でもお父さんは身長も大きく見つけやすい。



「おとーさん!!!」

「おお、ヒナ。ありがとう」

「も〜、一応持っていけばよかったのに」

「雨予報じゃなかったじゃないか」



職場に予備で置いておくとかできないものか。

そんなことを考えながらお父さんと帰り道を歩いていると、あの公園の近くでサッカーボールの音が聞こえた。


結弦君ーーーー?



「お父さん、私ちょっと学校に忘れ物したから先帰ってて!!」

「おいヒナ…」

「遅くならないから!」



結弦君。

どうして。

こんな雨の日に。

どうして。



今日は絶対星は見えないよ。

月も見えないよ。



それでも来る理由ーーーーー

悩み事ーーーー



「結弦君!!!」



どうしてこんなに胸が苦しいの?


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