はじめては全部きみでした。
自分で言っておきながら、恥ずかしくなって視線をそらした。
「行こうか」
結弦君の一歩後ろを歩いた。
美術館に入ると平日の午前ということもあってすいていた。
チケットを購入してさっそく鑑賞。
一歩踏まいれば、ゴッホの世界観が広がっていて目頭が熱くなる。
夢中になっていた私は、男の人の肩がぶつかりバランスをくずした。
「おい…」
とっさに結弦君が腕を引いてくれたことで転ぶことは無かったが、結弦君はそのまま私の手を握った。
「泉は危ないから…」
「あ、ありがと、う…」
嬉しくて、ドキドキして息が詰まりそうになる。
結弦君のほうを見ると、優しく笑ってくれた。
反則だよ、その笑顔ーーー
***
「すっっっごく楽しかった!」
「うん、俺も」
結弦君は私よりはるかに詳しくて
たまに解説をしてくれた
その時の結弦君は真剣な表情で
すごく、かっこよかったな。
やだ…なに考えてるんだろう…
そうだ、さっきグッズ売り場で結弦君に買ったゴッホのキーホルダー渡さなきゃ
バックの中からキーホルダーの入った袋を探していると
「泉、これ」
結弦君が右手を差し出した。
「え…?」
「泉に、あげる」
開けると、
「ま、待って結弦君!実は私も結弦君に」
結弦君へ渡すキーホルダーと同じものが入っていた。
2人で顔を見合わせ
「「あははははっ」」
笑った。
「ありがとう、結弦君」
「こちらこそありがとな」
気がついたらもう夕方で、学校もサボってしまったし帰ることになった。
「それじゃあ、また…公園で」
「ああ、またな」
少し…名残惜しい気持ち。
もう少し一緒にいられたら、なんて。
「泉」
結弦君が私の手を軽くひき、ぎゅっと握った。
結弦君は何も言わない。
だけど私にはそれが心地よく感じる。
「……また、な」
「……うん」