はじめては全部きみでした。
「そのキーホルダーどうしたの」
教科書を取り出してる間に鞄から反射したゴッホのキーホルダーを指さしてなっちゃんが言う。
「これは……」
「あ、ゴッホ展?行けたんだ」
「う、うん。そうなの。平日の午前中だからすいててーーー」
しまった、と思った。
その日は学校をサボった日。
「ああ、だから立花も休んでたんだね」
「う、うん」
咄嗟に肯定してしまった。
ひとりで行ったと言えば、それこそ疑われてしまう。
「楽しかった?」
「うん…」
それなら良かったとなっちゃんが微笑んだ。
あの日、啓介にも嘘をついて、今日は親友であるなっちゃんにまで嘘をついてしまった。
心が痛い…。
あれ…?
でもどうして、啓介も休みだったんだろう。
なっちゃんが学校で見かけていないだけだろうか。