はじめては全部きみでした。


六時間目の終わりを告げるチャイムが鳴ると、今日は私が啓介の教室へ向かう。


恐る恐る教室を覗いてみると、いつも通り仲間内で話し込んでいる啓介。



「け、けい…すけ!」



頑張って出したいつもより少し大きめの声は裏返り、教室にいた生徒の注目を浴びてしまった。


あー…やだな、こういうの…


早くここから去りたい…



「おっ啓介の彼女へと昇進したヒナちゃんじゃーん♪」



話したこともないチャラそうな男が馴れ馴れしく近づいてくる。



―――――怖い



きつい香水の匂いが鼻につく。



「やめろっつうの」



啓介が軽く蹴とばした。



「ごめん、大丈夫か?」

「…うん」

「帰ろう」



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