はじめては全部きみでした。
「啓介、待って」
いつもより歩く速度がはやく、ついていけない。
どうしちゃったの。
「…ごめん」
「啓介…?」
「今日、おばさんいる?」
「いないけど…」
「じゃあ、ヒナんち行ってもいいか?」
「えっと…」
「前みたいなこと…しないから」
なぜかいつもより重たい空気のまま私の家につき、部屋の中に入った。
「お茶、持ってくるね」
部屋から出てリビングへ降りると、安堵の息をもらした。
前回うちに来たときのこと……
まだ少し怖い。
だけど、よくよく考えたら手をつなごうとしただけだったん、だよね?
自分の手のひらをじっと見つめた。
どうしてだろう―――
結弦君の手の温もりが消えないの……
結弦君が怖くなかったなら…啓介だってきっと大丈夫。
深呼吸をしてから部屋に戻った。