はじめては全部きみでした。



「啓介、待って」



いつもより歩く速度がはやく、ついていけない。

どうしちゃったの。



「…ごめん」

「啓介…?」

「今日、おばさんいる?」

「いないけど…」

「じゃあ、ヒナんち行ってもいいか?」

「えっと…」

「前みたいなこと…しないから」





なぜかいつもより重たい空気のまま私の家につき、部屋の中に入った。



「お茶、持ってくるね」



部屋から出てリビングへ降りると、安堵の息をもらした。


前回うちに来たときのこと……

まだ少し怖い。


だけど、よくよく考えたら手をつなごうとしただけだったん、だよね?



自分の手のひらをじっと見つめた。



どうしてだろう―――

結弦君の手の温もりが消えないの……



結弦君が怖くなかったなら…啓介だってきっと大丈夫。



深呼吸をしてから部屋に戻った。






< 45 / 171 >

この作品をシェア

pagetop