はじめては全部きみでした。
「啓介、お茶持ってきたよ」
「ヒナ…これ」
啓介の手には美術館のチケット。
「そ、それ…」
「この前休んでたのって、これ?」
「う、うん、そうなの」
「……誰と?名月…じゃないよな」
啓介の目は、すべてを見透かしているようだった。
本当のことを言うべきか
でも……言ってしまったら、もう結弦君とは会えなくなるかもしれない。
そんなの――――――嫌だ。
「一人…だよ」
また一つ、嘘をついた。
「そう、だよな。ごめん、変なこと聞いて。でもだったら俺にも一応言えよな。変な嘘つくから心配した」
「ごめんね。さぼりだったから、岡さんにもばれたくなかったの」
「言わねーのに」
「そうだよね、ごめん…」
この嘘は、重い。
結弦君との秘密を守るための嘘とはわけが違う。
この嘘は、私を守るための…嘘。