はじめては全部きみでした。


「ヒナ…俺、ヒナのことが本当に好きだよ」

「ありがとう…」



そう返すと、啓介は急にまた少し怖い顔をした。



「こっち、きて」



強引に腕を引き寄せられた。



「ちょ、っと。啓介…」

「ヒナにもっと近づきたい」

「何言ってるの。一番近くにいたじゃん、ずっと」

「ダメ」



なにが――――言いかけたその口を、啓介が塞いだ。

頭が真っ白になって何が起きているのかわからなかった。



「い、いや!!!!!!」



思い切り突き飛ばした。


啓介はずっと近くにいた。


幼なじみだった。


家族だった。



そんな啓介とこんなの……嫌だよ



「ヒナ、俺…」

「こないで…!」

「ヒナ!」



もう一度腕を強くつかまれる。



「いや…!」



思い切り振り払うと、家を飛び出した。


あたりは暗くなっている。



夢中で走った。



会いたい。

会いたい。



―――――結弦くん


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