はじめては全部きみでした。


教室を出て、啓介の携帯に電話をした。



「…でない」



啓介、どこ?

今伝えなきゃ。

そうしなきゃ、私は言えなくなってしまう。



「なっちゃん!!!」

「ヒナ、どうしたの?そんな息切らして…」

「啓介、見なかった?」

「それなら…ヒナを探しにきたから…」

「ありがとう!!」

「まって…ちょっと、ヒナ!」



私の教室にきたあと、さっきまで係やっていた教室に来たのだと思った。

もうみんな帰ってると思うし、もう一度戻ってみよう。



啓介、私ずっと分からなかった。

恋が分からなくて、でも啓介といると楽しくて

幸せな気持ちになった。



これが恋だって思ってた。

ううん、言い聞かせてたのかもしれない。



結弦君に出会ってどんどん惹かれていって

でも、恋じゃないと思い込もうとしていたのかもしれない。



だけど、私の恋は川みたいな、刃みたいな

そんな恋だってわかった



結弦君のことになると、こんなに醜い私がいて
穏やかな気持ちだけではいられない。



でも、苦しいのに嬉しくて
会えると幸せで 涙が溢れそうになって

触れたいって思うようになって



全身で好きだっていってたんだ。



啓介への好きとは全然違った。

啓介は…家族と同じなんだ。



ドアを開けると

「啓介…!」

啓介がいた。



「ヒナ、探してたんだぞ」

「うん…私も」



ーーーーごめん。



「啓介、話があるの」



啓介を、傷つけるーーー



「俺も、話がある」


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