はじめては全部きみでした。
歯車
「ちゃんと説明してくれるよね?イガ」
千代に強引に部屋に連れ戻されるなり、言われた言葉。
「ここで……なに…してたの?」
いつも強気な千代の声が震えている。
目には涙が溜まっていた。
「俺……」
「どうしてこうなっちゃったの……私はただ、イガと…イガと一緒にいたいだけなのに…!」
千代―――――?
初めて千代からそんなセリフをきいた。
もしかしたら俺は…何かを勘違いしていたじゃないのか?
「千代は俺のこと、もう好きじゃなかったんじゃないのかよ」
「どうしてそうなるの!?私は…イガに告白した日から何も気持ちは変わってない」
「でもお前、触れるのも嫌がって…」
「それは!手を繋いで手汗かいたらどうしよう、とか思うのよ…。イガのこと好きで…好きだからこそ、嫌われるのが怖かったの!」
「なんだよそれ…」
ずっと、勘違いしていたのか?
こんなに健気に俺のこと想っていてくれたのか?
変わってしまったのは千代じゃなくて、俺のだったのか?
「イガって呼ぶのも…恥ずかしかったから。でも本当はずっと結弦って呼びたかった」
「千代…」
「ねえ。私…今日のこと忘れる。何も見てないことにする。だから私達やり直そうよ…結弦」
俺の目の前にいる千代は、俺に告白してきてくれたときの千代だった。
でも俺はもう――――――
「ヒナは…私の友達なんだよ」
「千代…」
「結弦ならわかってくれるでしょ?」
「そうだけど…」
「ヒナは私しか友達がいないの」
自分よりいつも誰かを優先にするような泉。
でも、あいつはきっとその分
誰かに標的にされやすい
「結弦………私、結弦の事が好きなの…誰よりも」
俺は――――――――――――――