はじめては全部きみでした。
予想以上の大型本屋さん。
ドキドキしながら足を踏み入れると
そこには私の大好きな空間が広がっていた
好きなところにくると
嫌なことを全て忘れられる
しかも本が読めるスペースまで設置されている。
「泉さん?」
後から聞き覚えのある声。
この声は…
「佐伯先輩!」
先輩だった。
私服の先輩は、なんだかいつもと違って見える。
「泉さんも本屋とか来るんだ」
「はい、大好きなんです…」
「どんな本読むの?」
「えっと…ミステリーが多くて……先輩は?」
「俺は外国文学ばっかり」
「意外ですね」
「俺ね、翻訳家になるのが夢なんだ」
夢ーーーーー
素敵だなって思った
本を見つめる先輩の目は
本当に大好きなことが伝わる
「どうして翻訳家に?」
「翻訳家が違えば、読者に伝わるものも変わるんだ。それって凄い面白いことだなって」
「凄い…」
「凄くないよ。泉さんは?夢はないの?」
「私は…」
考えたこともなかった。
夢、夢、夢…