はじめては全部きみでした。
「どうしたの?突然」
「んー…なんか私、このままでいいのかなって…」
「ヒナは頭いいしいくらでも選択肢あるじゃん!」
勉強は好きだけど…
目的がないままでいいのかな。
自分のやりたいことをそろそろ見つけないな…
大きくため息をついたとき、
教室のドアが開き、女の子たちの軽い歓声が聞こえた。
「ヒナちゃん、ちょっといい?」
「せ、先輩、」
慌ててお弁当を閉じて駆け寄ると
「場所変えよう」
と言われた。
裏庭にやってくると、先輩が立ち止まりなにやらポケットから取り出した。
なんだろう?
「これ…?」
名刺?
"編集部"って…
「知り合いに大手の出版社で働いている人がいてさ。良かったら見学に来ないかって」
「出版社…」
「本、好きなんでしょ?」
先輩は、殻に閉じこもっていた私をどこかへ連れ出そうとしてくれている。
そんな気がした。
結弦君と離れて毎日が真っ暗だった私。
そんな私が今、自分の夢を探している。
「いきます」
昔の自分を捨てて、新しい自分になるチャンスなんだ。