【短編】本日、総支配人に所有されました。
「ボイコット?…出来るなら、してみたらどうだ?…そもそも、お前達が篠宮や中里に嫌がらせしてるんじゃないのか?

仕事をまともに教えてやらないから、自分で育てる事にしただけだ。それが不満だと言うならば、ボイコットでも何でもしてみたら良い。

行くぞ、篠宮に中里!」


支配人が発する言葉に皆が圧倒されて、仕事の手を止める。


当事者達は唇を噛んで悔しそうにしていたり、涙を浮かべている者も居る。


支配人の放つ絶対的な存在感に誰も抗えない。


「支配人、篠宮さん、先日は御迷惑おかけして申し訳ございませんでした…」


「…その件はもう謝らなくて良い。これからはミスがあった時は遠慮なく言う事。例えば、ミスしたのが"先輩"だとしても、だ」


レストランを出て、従業員食堂に向かう途中で中里さんは立ち止まり、私達に深々と頭を下げて謝った。


先日の中里さんのミスに対して支配人が思う事があったらしく、指摘すると中里さんの目には涙が浮かぶ。


「はい…」と小さく返事をした時にはもう、涙が床に零れ落ちていた。


詳しい事は分からないけれど、中里さんは先輩のミスを見つけて、罪を一緒に背負わされていたらしく、その事を誤魔化す為に先日のダブルブッキングなどが起きたそうだ。


「篠宮も中里も途中入社で仕事もろくに教えてもらえなかったんだろ?朝のレストランで一緒に仕事をしてみて良く分かった。けれど、心配するな。私の知る限りは仕事を教えてやる」


「はいっ」
「…はい、宜しくお願い致します」


私は元気良く返事をして、中里さんは礼儀正しくお辞儀をした。


話しながら歩いて従業員食堂に入ると、お味噌汁のふんわりとした良い匂いが漂っている。
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