【短編】本日、総支配人に所有されました。
「お疲れ様、篠宮さん。今度はちょっとメイクさせてね」


「はい」と言って頷くと、拭き取りのクレンジングをして、素顔があらわになった。


「元々、目鼻立ちが良いから、あまりメイクもしてないでしょ?見るからにファンデとマスカラだけよね?多分だけど…、パッチリしてる目だから、自分ではいじりづらいんでしょ?違うかな?」


「メイクって、どうしたら良いのか分からなくて…。仕事中もナチュラルメイクが基本ですし…、いじり過ぎちゃうと目だけが強調されてしまって…」


「ふふっ、じゃあ、今から一緒にメイクのお勉強しましょ!」


色々なテクニックを教えて貰い、鏡に映った私は自分自身が見違える程の綺麗な女性だと自惚れる位に素敵になった。


幼さが抜けて、それでいてナチュラルメイクのままで、仕事が出来そうな雰囲気になったかも?・・・しれない。


「一颯、いぶきぃ!篠宮さん、元々可愛い人だけど、ちょっと引き出してあげただけで雰囲気変わったわよ」


全てが終了し、従業員の休憩室で待機していた支配人を呼び寄せ、私の姿を披露する。


店長さんも代わり映えが嬉しかったのか、テンションが高い。


「……これなら、仕事にも差し支えないだろう。幾分、幼稚さが抜けたな」


「何なのよ、その言い方は!もっと、こう、綺麗になったね、とかない訳?…まぁ、そんな事を言う一颯なんて気持ち悪いけどね!」


二人の掛け合いが何とも言えず、間に挟まれている私はたじろぐ。


「篠宮さんは、こんな彼氏を持つと大変ね!我が弟ながら面倒な奴だわ!」


彼氏?


我が弟?


「どっちにも言ってなかったが、コレは姉で美容室の店長。篠宮は部下で、幼稚さを理由にいじめられてるから連れてきただけ、以上!」
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