【短編】本日、総支配人に所有されました。
いつの間にかベッドシーンは終わっていて、ドラマの内容などは全然と言っていい程、頭の中には入っていない。


支配人が戻って来る前に帰り支度を済ませて、帰ろう。


「…まさか、今から帰ろうとか思ってないよな?」


「…か、帰ってまた明日来ますっ」


帰り支度をしている途中で支配人が戻って来て、私に問いかける。


「夜中に一人で出歩くな、とさっき言ったばかりだろ!俺はシャワーを浴びたし、送るつもりはないからな。…大人しく、泊まって行くように」


ギロリ、と睨まれて「業務命令だ!」とトドメを刺された事に対して、「勤務中ではありません…」と口答えをする。


口答えをしてしまったので倍返しの叱責を想像したが、その逆で「お前の意思でココに来たんだから、ゆっくりと話をしよう。絶対に手は出さない、約束する」と優しく語りかけてきた。


「はい…」と短く返事をし、手に持っていたバッグをフローリングの床に下ろす。


シャワーを浴び、支配人から借りたTシャツに袖を通すとブカブカで肩がズレていた。


生憎、私服にキャミソールを着てきたので、Tシャツの中に着る事により、肩ズレによる下着のチラ見せはなくなる。


良かった・・・。


「やっぱり大きかったよな?今度来る時は着替えも持って来るように」


「…はい」


ドライヤーで髪を乾かした後、支配人の待つソファーまで移動するとテーブルにはワインとクラッカーなどが用意されていた。


グラスにワインを注ぐ姿が、何とも言えずに素敵で様になっている。


「お疲れ様」と言って乾杯をし、口に含むとフルーティな酸味と甘みのバランスが良い辛口の白ワインの味わいが広がった。
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