【短編】本日、総支配人に所有されました。
甘みが少なくピリッとした舌に残る感覚が私には苦手に感じて、二口飲んだだけで口に運べずにいると左隣から視線を感じた。


「どうした?苦手か?」


「私には辛口過ぎるようです。甘口しか飲んだ事がないので…すみません」


支配人は「お子様だな…」と言いながら、仕方なさそうに立ち上がり、キッチンへと向かう。


「お茶下さい!」とソファーから声をかけたが、聞く耳持たずに出されたのはフルーツ入りのサングリア。


「空いてた赤ワインとお前が買ってきたフルーツを入れてみた。足りない分のフルーツは明日買い足す」


「いただきますっ」


ボルドーの赤ワインに生搾りのオレンジを足し、キウイとイチゴも加えてある。


一口飲むと甘みが増した赤ワインが口の中に広がる。


「美味しっ」


ご丁寧にもフルーツも食べられるようにとスプーン付きだったので、フルーツを掬い支配人に「食べます?」と聞く。


私がスプーンを持つ手を握り、自分の口をスプーンまで近付けてパクリと食べた。


「…味見はしたが、フルーツを食べると想像よりも甘かったな」


「甘くて、一日の疲れが取れますね」


支配人には甘すぎたのか、辛口の白ワインを口に含み、口直しをしているみたいだ。


隠れ甘党男子でも、いや、隠れだからこそ、お酒は辛口が好きらしい。


「……支配人はワイン好きですか?」


「そうだな。辛口を好むから主に白だな。お前は甘い酒なら飲めるのか?」


「はい。甘いお酒ならなんでも飲みます」


「そうか、覚えておく」


サングリアを飲みながら、途中でフルーツも食べる。


繰り返している内に思考回路がグルグルとしてきて、眠気も襲ってくる。


支配人がテレビを見ながら世間話をしていたが、その回虚しく瞼が重くなっていた。


「篠宮…?」
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