【短編】本日、総支配人に所有されました。
「…朝食、作っておいた」


目が覚めた時には支配人の姿はなく、ソファーに座り、ニュースを見ながらコーヒーを飲んでいた。


「…すみません、朝食から作ろうって決めてたのに…。しかも、遅くまで寝てしまって…」


「気にするな。疲れてるのに手料理食べたいって無理強いしたのは俺だから…。逆に悪かったな。歯ブラシとタオルは洗面所に置いてある。支度が出来たら朝食にしよう」


「……はい」


気合いを入れて買い物して来たのに全然役にも立たず、逆に迷惑をかけている私。


洗面所で支度をしながら、反省をする。


いくら背伸びしてみても追いつきそうもないのは、私がまだまだ子供だからだ。


"好き"だって自覚しても、このままじゃ、気持ちを伝える事すらも躊躇してしまう。


隣に居ても釣り合いのとれる女性になる為にはどうしたら良いのだろう?


「…ふわふわ、あっ、チーズ入ってる!美味しそう…」


手短に支度を済ませた後、キッチンで二人だけの朝食タイム。


支配人はふわふわのチーズ入りオムレツとサラダ、トーストを準備してくれていた。


オムレツもトーストも、私が洗面所で支度をしている時に準備してくれたらしく、アツアツのまま。


「そんなに喜んでくれるなら、作りがいがあるな」


オムレツを前にキラキラと目を輝かせてしまった私に対して、支配人はクスクスと笑う。


きっと子供っぽい、と感じて笑ったのだろう。


それじゃ駄目なのに!・・・でも、目の前の美味しい誘惑には勝てません。


「美味しいです、とっても。私なんかより、料理が上手ですね。支配人って器用に何でもこなしますよね?」


「一人暮らしが長いからな。…器用貧乏で何でも自分でやってしまうから、30を過ぎた今も独り身だ」
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