キミが笑ってくれるなら、それだけで…
そんな私に、
上目遣いの日下部くんは
「本当にごめんな…
困らせるつもりはなかったんだ。
迷惑だった?」
と、目をうるうるさせて
尋ねてくる。
なんだか耳と尻尾が
垂れてる犬みたい…
不覚にも可愛いと思う私がいる。
今朝から思ってたけど、
日下部くんって人懐っこい犬みたい…
しかもそんな日下部くんに
大勢の前で本音は
かなり言いづらい…
だけど、ここで突き放さなかったら
きっと日下部くんは明日からも
私に関わろうとしてくるかも
しれない。
それに私は冷たい人間って
みんなには周知の事実なんだし…
私はここで突き放すべきだよ。
「うん、迷惑」
私を見上げる日下部くんの目が
寂しげに揺れてる…
こんな沢山の人がいる前で
ごめんね。
でも、私は人と関わっては
いけない人間だから…
死に追いやる疫病神だから、
これ以上近付かないで。
日下部くんから笑顔を奪うことは
したくない。
太陽みたいに明るくて
弾ける笑顔の日下部くんには
これからもずっと笑っていて欲しい。
教室中からの
冷たい視線や言葉を
真っ直ぐに受け止めながら、
日下部くんの視線から目を逸らした。
これが私の生き方で
関わる人を守るための術。
そして、私自身を守る術なの。
誰も傷付けたくないし、
傷付きたくない。
今この瞬間、日下部くんを
傷付けてしまってるけど、
これから先の事を考えれば
これが私の精一杯。
ごめんね…
そんな顔をさせてしまって…
それが
私のせいなのは分かってる。
だけど…
太陽みたいに明るくて温かい、
日下部くんには笑顔が似合うから、
笑っていて欲しい。
ただそれだけでいい…
「そっか…ごめんな」
そう言って立ち上がる
日下部くんの声色は
蚊の鳴くような声で弱弱しくて
私の胸を締め付けたけど
私は目を逸らしたまま、
真っ直ぐ前を見続けた。
チャイムが鳴り、日下部くんは
肩を落としながら席へと戻って行く。
その後ろ姿は、やっぱり耳と尻尾が
垂れているように見えた。
それを振り返る
南野さんと羽柴くんも
日下部くんの姿を心配そうに
見つめながらも
それぞれの席へと戻って行った。
そして、私から離れて行った
日下部くんは昼休み後から
驚くほど静かだった。
全ての授業が終わり
放課後の教室では、クラス委員決め
真っ最中。
芦屋先生の自選、他薦は問わないという
言葉にクラス中が顔を見合わせて
「絶対やりたくなーい、面倒!」
「雑用ばっかで嫌だよなー」と
口々に話している。
そんな私も内心、嫌だと思う1人だ。
目立つ事も、自分から話すのも
苦手だから。
雑用はいいけど、何かの決め事では
進行やまとめ役をしなくちゃいけない。
1年の時、いかにも大人しそうな
女の子が押し付けられそうに
なっているのが我慢出来ずに
私は自分の立ち位置を忘れて
手を挙げてしまっていて
私はクラス委員をする事に
なったんだった。
だけど、このクラスには
その手の子はいないし
大丈夫だろうと思っていた。
そう考えていた時だった…
クラスの中でも一際目立つ容姿の
女の子グループの1人、
吉野さんが手を挙げた。
一瞬私に冷たい視線を
送り、口元に笑みを浮かべた。
なんか嫌な予感がする…
そして、その予感は見事に的中した。
「花宮さんを推薦しまーす!」
それに賛同するように答えたのは
同じグループのメンバー達で
「私も、花宮さんを推薦しまーす」
「花宮さん、1年の頃もしてたし
いいんじゃない?」
その言葉にクラス中から
視線を向けられる私。
表情には出さないけど、
正直なところ動揺してる。
「おー、花宮か。
そうだったな!
今年もやってくれるか?」
芦屋先生から放たれる言葉に
心からやりたくないと思うものの、
他の人が決まらなければ
延々と続くであろう委員決めに
時間を取られては
放課後の幸ちゃんと過ごす
ひと時が潰れてしまう。
それは嫌だな…
私が「やります」と一言言えば
あとは残り1人を決めるだけ。
それなら、もう手を挙げて
しまおうかと思っていた時だった。
「先生ー!私やりたい!」
元気よく手を挙げたのは
南野さんだった。
えっ…南野さん?
動揺する私にウィンクをする
南野さんに私の頭の中は
ハテナマークでいっぱいだった。
確かにそういうのは
私なんかより南野さんのような
人の方が向いてるとは思うけど。
まるで、大丈夫だと言うように
ウィンクをして見せた南野さんに
もしかして、という気持ちが
頭をよぎる。
押し付けられる私を助ける為?
でも、まさかね…
いくらなんでも、それは
自意識過剰かな?
だって私は感情を持たない
アイスドールなんだから。
単にやりたいだけなのかもしれない。
「1回やってみたかったんだよね!
花宮さん、私がやってもいい?」
笑顔でこちらを見る南野さんに
私はゆっくり頷いた。
「おー!南野か!
じゃあ、1人は南野に決定!
あとは男子だな。
誰かいるかー?」
そして、手を挙げたのは
日下部くんだった。
「はいはいっ!!俺やるー!」
元気いっぱいに立ち上がって
手を挙げる後ろ姿に
思わず笑いそうになった。
なんか、日下部くんって
やっぱり犬っぽい…
尻尾をブンブン振っているみたい!
感情が真っ直ぐ出るんだな…
楽しい時は目一杯笑って、
悲しい時は驚くほど静かになる。
私には出来ない事ばかり…
「あ?日下部?
お前に務まるのかー?」
先生から疑いの眼差しを受ける
日下部くんはめげずに手を挙げて
「それくらい俺だって出来るし!
風花も一緒だから、俺がヘマしても
フォローしてくれるし!」と、
必死になっている日下部くん。
でも、ヘマする前提なんだね…
笑いそうになるのが
バレないように俯く私は、
日下部くんの言葉に、盛大な
溜め息を溢す南野さんをそっと
見つめた。
幼馴染で息もぴったりなら、
大丈夫そう。
そして、クラス委員は
日下部くんと南野さんに決定した。
上目遣いの日下部くんは
「本当にごめんな…
困らせるつもりはなかったんだ。
迷惑だった?」
と、目をうるうるさせて
尋ねてくる。
なんだか耳と尻尾が
垂れてる犬みたい…
不覚にも可愛いと思う私がいる。
今朝から思ってたけど、
日下部くんって人懐っこい犬みたい…
しかもそんな日下部くんに
大勢の前で本音は
かなり言いづらい…
だけど、ここで突き放さなかったら
きっと日下部くんは明日からも
私に関わろうとしてくるかも
しれない。
それに私は冷たい人間って
みんなには周知の事実なんだし…
私はここで突き放すべきだよ。
「うん、迷惑」
私を見上げる日下部くんの目が
寂しげに揺れてる…
こんな沢山の人がいる前で
ごめんね。
でも、私は人と関わっては
いけない人間だから…
死に追いやる疫病神だから、
これ以上近付かないで。
日下部くんから笑顔を奪うことは
したくない。
太陽みたいに明るくて
弾ける笑顔の日下部くんには
これからもずっと笑っていて欲しい。
教室中からの
冷たい視線や言葉を
真っ直ぐに受け止めながら、
日下部くんの視線から目を逸らした。
これが私の生き方で
関わる人を守るための術。
そして、私自身を守る術なの。
誰も傷付けたくないし、
傷付きたくない。
今この瞬間、日下部くんを
傷付けてしまってるけど、
これから先の事を考えれば
これが私の精一杯。
ごめんね…
そんな顔をさせてしまって…
それが
私のせいなのは分かってる。
だけど…
太陽みたいに明るくて温かい、
日下部くんには笑顔が似合うから、
笑っていて欲しい。
ただそれだけでいい…
「そっか…ごめんな」
そう言って立ち上がる
日下部くんの声色は
蚊の鳴くような声で弱弱しくて
私の胸を締め付けたけど
私は目を逸らしたまま、
真っ直ぐ前を見続けた。
チャイムが鳴り、日下部くんは
肩を落としながら席へと戻って行く。
その後ろ姿は、やっぱり耳と尻尾が
垂れているように見えた。
それを振り返る
南野さんと羽柴くんも
日下部くんの姿を心配そうに
見つめながらも
それぞれの席へと戻って行った。
そして、私から離れて行った
日下部くんは昼休み後から
驚くほど静かだった。
全ての授業が終わり
放課後の教室では、クラス委員決め
真っ最中。
芦屋先生の自選、他薦は問わないという
言葉にクラス中が顔を見合わせて
「絶対やりたくなーい、面倒!」
「雑用ばっかで嫌だよなー」と
口々に話している。
そんな私も内心、嫌だと思う1人だ。
目立つ事も、自分から話すのも
苦手だから。
雑用はいいけど、何かの決め事では
進行やまとめ役をしなくちゃいけない。
1年の時、いかにも大人しそうな
女の子が押し付けられそうに
なっているのが我慢出来ずに
私は自分の立ち位置を忘れて
手を挙げてしまっていて
私はクラス委員をする事に
なったんだった。
だけど、このクラスには
その手の子はいないし
大丈夫だろうと思っていた。
そう考えていた時だった…
クラスの中でも一際目立つ容姿の
女の子グループの1人、
吉野さんが手を挙げた。
一瞬私に冷たい視線を
送り、口元に笑みを浮かべた。
なんか嫌な予感がする…
そして、その予感は見事に的中した。
「花宮さんを推薦しまーす!」
それに賛同するように答えたのは
同じグループのメンバー達で
「私も、花宮さんを推薦しまーす」
「花宮さん、1年の頃もしてたし
いいんじゃない?」
その言葉にクラス中から
視線を向けられる私。
表情には出さないけど、
正直なところ動揺してる。
「おー、花宮か。
そうだったな!
今年もやってくれるか?」
芦屋先生から放たれる言葉に
心からやりたくないと思うものの、
他の人が決まらなければ
延々と続くであろう委員決めに
時間を取られては
放課後の幸ちゃんと過ごす
ひと時が潰れてしまう。
それは嫌だな…
私が「やります」と一言言えば
あとは残り1人を決めるだけ。
それなら、もう手を挙げて
しまおうかと思っていた時だった。
「先生ー!私やりたい!」
元気よく手を挙げたのは
南野さんだった。
えっ…南野さん?
動揺する私にウィンクをする
南野さんに私の頭の中は
ハテナマークでいっぱいだった。
確かにそういうのは
私なんかより南野さんのような
人の方が向いてるとは思うけど。
まるで、大丈夫だと言うように
ウィンクをして見せた南野さんに
もしかして、という気持ちが
頭をよぎる。
押し付けられる私を助ける為?
でも、まさかね…
いくらなんでも、それは
自意識過剰かな?
だって私は感情を持たない
アイスドールなんだから。
単にやりたいだけなのかもしれない。
「1回やってみたかったんだよね!
花宮さん、私がやってもいい?」
笑顔でこちらを見る南野さんに
私はゆっくり頷いた。
「おー!南野か!
じゃあ、1人は南野に決定!
あとは男子だな。
誰かいるかー?」
そして、手を挙げたのは
日下部くんだった。
「はいはいっ!!俺やるー!」
元気いっぱいに立ち上がって
手を挙げる後ろ姿に
思わず笑いそうになった。
なんか、日下部くんって
やっぱり犬っぽい…
尻尾をブンブン振っているみたい!
感情が真っ直ぐ出るんだな…
楽しい時は目一杯笑って、
悲しい時は驚くほど静かになる。
私には出来ない事ばかり…
「あ?日下部?
お前に務まるのかー?」
先生から疑いの眼差しを受ける
日下部くんはめげずに手を挙げて
「それくらい俺だって出来るし!
風花も一緒だから、俺がヘマしても
フォローしてくれるし!」と、
必死になっている日下部くん。
でも、ヘマする前提なんだね…
笑いそうになるのが
バレないように俯く私は、
日下部くんの言葉に、盛大な
溜め息を溢す南野さんをそっと
見つめた。
幼馴染で息もぴったりなら、
大丈夫そう。
そして、クラス委員は
日下部くんと南野さんに決定した。