キミが笑ってくれるなら、それだけで…
あれから、もう1年…

「パパ、ママ、律さん…

今日から私、高校2年生だよ。

律さん…今日もお花達は元気に

綺麗に育ってるよ。

バーベナもすくすく成長してて

もうすぐ蕾が開くかも…

楽しみにしててね!

パパ、ママ…私は今日も

元気に生きてるよ」

3人にいつもの挨拶をして、

私は家を出た。

私は他の生徒より早い時間に

登校する。

時刻は7時30分…

それは、花壇の花に水遣りをする為。

律さんの影響もあってか、花が

好きな私はたった1人の園芸部員。

それに、人と関わることを

避けたい私にはピッタリな部活。

決して人が嫌いなわけじゃない…

話掛けられれば話すし、

必要性のある時は話す。

授業で当てられた時や

先生に頼まれごとをされた時。

それ以外で、私が自分から

話し掛ける事は高校に入ってから

1度もない。

1年の頃は、お昼休みのたびに

「一緒にお弁当食べない?」と声を

掛けてくれたけど、何かしら理由を

つけては断っていた。

それが毎回ともなると、必然的に

声を掛けてくる人は減るけど、

私はそれが有り難かったりする。

申し訳ないとは思うけど、私は

1年前に決めたんだ。

『好きになったりしない…

大切な人もつくらない…

みんなの分も生きるけど、

わたしはこの罪を背負ってだけ

生きていく』って。

それは、友達という関係もそう。

とにかくそうして生活しているうちに

わたしにはあだ名がついた。

『アイスドール』

クールで無表情、そして話さない

人形のようだから…らしい。

誰がつけたかは知らないけど、

考えた人は、ズバリ的を得ていて

すごいなって思った。

でも、話さない事はないけど…

自分からは話さないってだけで、

話掛けられれば話すし。

まあ、どうでもいいけどね。

今日から新しいクラスでの生活が

始まるけど、私は私のままで

何も変わらない。

ただ毎日を生きていく…

もちろん、1人で。

私には今目の前にある花とあの子が

居れば十分。

時計を見ると、そろそろ他の生徒が

登校してくる。

「また、明日ね」

私は花達に笑顔で挨拶をして

新しいクラスへと歩いた。








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