Perverse
やりがいのある仕事を持っているということが、どれほど幸せなことなのか。



今の私にはとてもよくわかる。



ひたすら仕事に打ち込めば、頭の中から余計なことは消えてくれるから。



無理矢理にでも笑顔を作れば、いつの間にかそれが自然な笑顔になってくる。



私自身が大嫌いだった、誰もが好んでくれる『皆の三崎さん』は、今は私の心に上手く鎧を着せてくれた。



柴垣くんを好きになる前の私に戻ったのだと言い聞かせれば、柴垣くんの隣に座っていても少しは気持ちをコントロールできる様な気がする。



大人ってこんなにも狡さと打算で立ち回れるのかと思うと嫌になった。



日に日に広がっていく柴垣くんと竹下さんの噂話。



それに対して柴垣くんは一切口を開かないけれど。



土曜日に柴垣くんのマンションにいた竹下さんを思い出すと、ところ構わず泣きたくなった。



職場で鎧をまとっている分、家に帰れば崩壊してしまうのは仕方のないこと。



心が痛くて涙腺はいとも簡単に崩壊してしまうのだ。



こんな思いをするくらいなら…心なんていらないのに。
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