Perverse
言葉汚く罵るよりも、淡々と小馬鹿にされた方が腹が立つ。



竹下さんはその典型で、もう全てをさらけ出して懸命に私を睨みつける。



「三崎さん、私をバカにしすぎですよ」



「竹下さんだけじゃない。私は誰からも潰されたりなんかしない。他人の嫌がらせで落ちるほど甘い仕事はしてきてないの」



「女の営業なんて媚売れば数字取れるでしょ。みんな言ってます。三崎さんならなおのこと、簡単じゃないですか」



おおかた同族の女子社員か、仕事が出来ずに追いやられた男性中堅社員のセリフだろう。



言いそうなことだ。



「楽な仕事なんて一つもない。女ならなおさら偏見も持たれるし大変なの。どれだけ見下されて理不尽な思いしたかしれないわ。でも、それを乗り越えて今があるの」




何度も何度も頭を下げ、家でひたすら泣いて取引先で笑顔を見せた。



挫折しそうになっても自分を奮い立たせて踏ん張った。



「自分の精一杯の力で作り上げた地盤は、他人なんかに脅かされたりしないわ」



他人にそんな権利はないの。



「なにより私には…支えてくれる人達がいるから」



脳裏に浮かぶのは、いつも私の心を救ってくれた人たちだ。
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