Perverse
それを竹下さん自身が気付くのは難しいだろう。



今まで自分の置かれた環境や立場に疑問も持たなかったのだから。



「まぁ、そこまで根付いた性格の悪さは変わらないだろうけど…」



「何ですかそれ。めちゃくちゃ頭に来るんですけど」



ぶすっとしたまま反論してくるけれど、さっきまでの勢いは感じられない。



少しは怒りも沈下したかのよう。



「本当のことなんだから仕方ないわ。でも取り組む姿勢は変えられるんじゃない?」



自分の身の回りは自分で変えるしかないんだから。



「人を陥れる事にエネルギーを使う前に、やるべき事に使ったらいいのよ。そうしたらスグじゃなくても、いつかあなたも周りも変わるかもしれないじゃない」



「そんなこと、わからないじゃないですか」



何となく竹下さんの表情を見ていると思う。



もしかして彼女も葛藤しているのではないのかと。



今のどうにもならない現状と、思い描く未来があまりにもかけ離れ過ぎていて。



「確かに保証はないけど、何もしなかったら一切変わらないわ」



何かを変えるためには自分が変わるしかない。



そんな簡単な事も見失ってしまっているんだろう。



「性根の腐った腰掛社員として働くか。仕事はできなくても頑張れる社員として働くか。選ぶのはあなた自身よ」



「最低な言い方しますね三崎さん」



「でも言い返せないでしょう?」



私のあまりの物言いに、竹下さんはもはや毒牙を抜かれてしまったようだ。
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